電話営業の成果が偏る、そのとき現場で何が起きているか
電話営業の成果は、同じ人数・同じリストでも大きく偏ることがあります。毎月安定してアポを取る担当者がいる一方で、架電数は変わらないのに成果につながらない担当者もいます。この差は、多くの現場で「センスの差」として片付けられがちです。
しかし実際には、成果の差は仕組みの差であることが多いです。トップ営業がどんな基準で相手を見極め、どんな言い回しを使っているかが、他の担当者に共有されていないケースが目立ちます。
例えば個人向けの高額商材を扱う営業現場では、成績上位の担当者ほど紹介による成約に支えられていて、新規架電そのものをあまり行っていないという状況が見られます。この場合、新規開拓の成果を測ろうとしても、上位者のやり方を新人が真似する土台がありません。
別の現場では、担当者の報告と実態のズレを見抜く判断がリーダー一人の頭の中にしかなく、その確認作業が特定の人に集中していました。判断基準が言語化されていないため、他のメンバーは真似のしようがなかったのです。
このように、属人化の実態は「架電が下手」ではなく、基準やリスト、育成の仕組みが共有されていないことに起因します。放置すると、成果を出せる人と出せない人の差は年々広がっていきます。
まずは「なぜ差が生まれているのか」を、担当者の性格や才能ではなく、仕組みの側から見直す視点を持つことが出発点になります。
属人化を生む3つの要因を洗い出す
属人化と一言でいっても、原因は一つではありません。現場でよく見られるのは、大きく3つのパターンです。切り分けずに「属人化してる」とだけ言っていると、対策も曖昧になってしまいます。
1つ目は台本依存です。トップ営業が話している内容が言語化されておらず、新人がその場の受け答えを真似できません。感覚的な話し方は、聞いても再現できないことがほとんどです。
2つ目は紹介依存です。成果が出ている人ほど、実は新規の架電ではなく既存顧客からの紹介で数字を作っていることがあります。この場合、その人の「凄さ」は新規開拓のスキルとは別物です。
3つ目はリストの質のばらつきです。同じ件数を配っていても、当たりやすいリストを持つ人だけが成果を出していることがあります。リストの偏りを見ずに個人の実力差だと判断すると、原因を取り違えます。
次のような切り口で自社の状況を整理すると、どこに手を打つべきかが見えてきます。
- 台本依存:トップ営業の話し方や判断が言語化されておらず、新人が再現できない
- 紹介依存:好成績の中身が新規架電ではなく既存顧客からの紹介に支えられている
- リスト精度:架電先の質にばらつきがあり、当たりリストを持つ人だけ成果が出る
偏りをチェックする診断表
原因を切り分けたら、次は自社のチームが実際にどの状態にあるかを確認します。感覚ではなく、記録や数字で見比べることが大切です。以下のような表を使って、チームの状態を点検してみてください。
| 観点 | 成果が偏っていないチーム | 成果が偏っているチーム |
|---|---|---|
| 新人の再現性 | トークの型があり誰でも試せる | 上位者のやり方が言語化されていない |
| 判断基準の共有 | アポの定義や見極め方が共通 | 担当者ごとに基準がバラバラ |
| リストの割り振り | 質を均して公平に配分 | 当たりリストが特定の人に偏る |
| 断られた後の記録 | 理由がタグ付けされ再利用できる | 記録が残らず記憶頼み |
| 育成にかかる期間 | 目安が決まっている | 人によって大きく変わる |
この表を見て「うちは右側が多いな」と感じたら、それは個人の能力の問題ではなく、仕組みが整っていないサインです。1つずつ、次の見出し以降で手当てしていきます。
新人が独り立ちするまでの流れをどう設計するか
育成期間が人によってバラバラなのは、育て方が仕組み化されていないからです。ある投資用不動産の営業現場では、新人が独り立ちするまでにペアで半年から一年、状況によっては二、三年をかけて育てているという例もありました。時間をかけること自体は悪くありませんが、何を基準に独り立ちと判断するかが曖昧だと、育成期間はどんどん長くなります。
育成を仕組み化するには、「独り立ちの定義」を先に決めておくことが重要です。何件アポが取れたら独り立ちなのか、どんな会話ができれば合格なのかを、感覚ではなく基準として言葉にします。
よくある失敗は、指導役の上司が忙しくなると同行やチェックが止まり、育成が止まってしまうことです。育成の質が指導役の余力次第になっている状態も、一種の属人化です。
流れを整理すると、以下のようなステップに分解できます。
- 1同行・ペア確認先輩の架電に同席し、実際のやり取りを聞く
- 2トークの型を渡す言語化した基準とスクリプトを共有する
- 3録音を振り返る自分の架電を聞き直し、ずれを確認する
- 4独り立ち判定決めた基準に沿って合否を判断する
この流れを文書として残しておけば、指導役が変わっても育成の質が落ちにくくなります。
判断基準を仕組み化する3段階
ベテランの「なんとなくの判断」は、そのままでは他のメンバーに引き継げません。ある組織では、リーダー一人に判断が集中し、担当者の報告と実態のズレを見抜く作業が抜けられない状態になっていました。こうした状態を解消するには、段階を踏んでナレッジを仕組みに落とし込む考え方が役立ちます。
最初の段階は、判断の見える化です。過去のやり取りや判断結果を記録として残し、誰が見ても振り返れる状態にします。ここでいきなり全自動化を目指す必要はありません。
次の段階は、記録をもとにした判断支援です。報告と客観的な記録を突き合わせて、ずれが出やすいパターンを洗い出します。これにより、指導役の確認作業が減っていきます。
最後の段階は、基準に沿った対応を担当者自身が判断できる状態です。ここまで来ると、特定の一人が抜けても業務が止まりません。焦って最終段階から始めようとすると、記録が足りずうまくいかないことが多いです。
紹介・既存顧客への依存から抜け出す設計
成果を出している担当者の数字をよく見ると、新規架電ではなく紹介や既存顧客からの案件で支えられていることがあります。これ自体は悪いことではありませんが、「その人のテレアポが上手いから成果が出ている」と誤解すると、新人育成の方針を間違えます。
よくある失敗は、紹介中心のトップ営業をそのまま新規開拓のお手本にしてしまうことです。紹介での成約が得意な人と、ゼロから架電してアポを取るのが得意な人は、必要なスキルが違います。
これを避けるには、新規と紹介の成果を分けて記録することが必要です。分けて見ることで、本当に新規開拓が強い担当者が誰なのかが分かります。
- 新規架電:ゼロから電話をかけて興味を引き出す力
- 紹介対応:すでに信頼関係がある相手を成約に導く力
- 混同のリスク:どちらの数字も「営業力」として一括りにされがち
この2つを分けて評価する仕組みがないと、新規開拓の担当者がいつまでも育たず、紹介が減った途端に組織全体の数字が崩れます。
社内で決めておくルール
属人化の見直しを続けるには、担当者個人の努力だけに頼らない社内ルールが必要です。特に、判断や作業を「自分の勘に任せる」のか「基準として仕組み化する」のかを、あらかじめ決めておくことが重要です。
よくある失敗は、ルールを作っても運用されずに元に戻ってしまうことです。ルールは、誰が確認するかまで決めて初めて機能します。担当者任せにすると、忙しい時期から順に形骸化していきます。
決めておきたいのは、アポイントの定義、リストの配分方法、断られた理由の記録方法、そして育成の合否基準です。これらは一度決めたら終わりではなく、定期的に見直す前提で運用します。
- 定義の統一:アポイントや見込み度合いの基準を全員で共有する
- 記録の担当:誰がいつ記録を確認するかを決めておく
- 見直しの頻度:月次などタイミングを決めて基準を更新する
判断の任せ方を整理すると、以下のように考えられます。
まとめ
明日からできることは、まず自社のチームを診断表に当てはめて、どこが「偏っているチーム」側に近いかを確認することです。5つの観点のうち、特にずれが大きいところから手をつければ十分です。
ただし、この確認や育成の仕組み化を人の電話だけで回そうとすると、途中で詰まりやすい壁があります。診断のための架電件数を増やそうにも、担当者が既存業務で手一杯で、新規開拓に回せる時間が限られてしまうのです。結果として、せっかく決めた基準も、実行する余力がなく形だけになりがちです。
この壁は、AI音声エージェントによる架電で状況が変わる部分があります。時間帯を選ばずに一定件数をこなせるため、担当者の手が空かない時期でも診断に必要なデータが取りやすくなります。また、会話の記録が自動で残るため、「断られた理由」や「反応の良い言い回し」を属人的な記憶に頼らず蓄積できます。とはいえ、向き不向きは会社の商材や架電件数によって変わるため、自社の状況に当てはめて、まずは無料相談で条件を確かめてみることをおすすめします。




