なぜ人材紹介の架電は工数がかさむのか
人材紹介の法人営業では、求人企業の開拓と、既存の求職者対応が同時に発生します。営業担当は「新規開拓の電話をかける時間がそもそも取れない」という状態に陥りやすい構造です。
たとえば、ある人材紹介会社の営業部門では、保有リストが数千社規模にのぼる一方、実際に電話をかけられるのは担当者の空き時間に限られていました。結果として、リストの多くが未着手のまま滞留してしまいます。
さらに、電話をかけても受付で止まってしまうことが多いのも人材紹介特有の事情です。採用担当者に直接つながるまでに、複数回の電話が必要になるケースは珍しくありません。
この状態が続くと、担当者は「かけた数」ではなく「つながった数」を基準に評価されるべきなのに、かけること自体に疲弊してしまいます。断られ続ける架電は、気持ちの面でも負担が小さくありません。
工数がかさむ原因は一つではなく、リストの優先順位が付いていないこと、受付突破に時間がかかること、担当者が新規開拓と既存対応を兼務していることの3つが重なっている場合がほとんどです。
まずはこの3つを分けて考えることが、効率化の出発点になります。
求人企業発掘から一次架電までの工程を分解する
架電を効率化するには、まず「求人企業の発掘」から「一次架電」までの流れを、工程ごとに分けて考えることが出発点になります。ひとまとめにすると、どこを変えればよいか判断できません。
工程を分けると、大きくは5つです。リスト作成、優先順位付け、一次架電、引き継ぎ、フォローです。それぞれ必要なスキルも、使う時間の長さも異なります。
- リスト作成:業種・地域・企業規模などの条件で架電対象を洗い出す工程
- 優先順位付け:採用ニーズの兆候がある企業を先に並べる工程
- 一次架電:受付突破と担当者への一次ヒアリングを行う工程
- 引き継ぎ:反応のあった企業を営業担当が引き継ぐ工程
- フォロー:商談・提案につなげる工程
このうち、人でなければ難しい工程は、フォロー以降の商談化です。一次架電や受付突破は、定型的なやり取りが中心になりやすく、任せやすい工程だと考えられます。
- 1リスト作成業種・地域・企業規模で架電対象を洗い出す
- 2優先順位付け採用ニーズの兆候で並べ替える
- 3一次架電受付突破と一次ヒアリングを行う
- 4引き継ぎ反応があった企業を営業担当に渡す
- 5フォロー商談・提案へつなげる
工程を分けて眺めると、「どこに時間を使いすぎているか」が見えてきます。多くの場合、一次架電と受付突破に大半の時間が使われています。
対象企業をどう絞り込むか
リストが大きいほど、全件に同じ熱量で電話をかけることは現実的ではありません。対象企業を絞り込む基準を決めておくことが、架電の質を左右します。
絞り込みの基準としてよく使われるのは、業種、企業規模、採用の兆候の3つです。採用サイトの更新状況や求人媒体への掲載状況は、比較的確認しやすい兆候といえます。
たとえば、ある製造業向けの営業チームでは、求人媒体に継続的に掲載している企業を優先リストに入れる運用をしています。掲載が続いているということは、採用が思うように進んでいない可能性があるためです。
逆に、絞り込みをせずに架電すると、採用ニーズが薄い企業に時間を使ってしまうという失敗が起こりがちです。断られる回数が増えるほど、担当者の疲弊も大きくなります。
- 業種:自社が強みを持つ職種と親和性が高いか
- 規模:紹介手数料の水準に見合う採用予定人数か
- 兆候:求人媒体への掲載や採用ページの更新頻度
- 過去接点:休眠リストであれば前回の反応内容
絞り込みの基準は、一度決めたら固定するのではなく、架電結果を見ながら調整していくものです。反応が薄い基準は緩め、反応が良い基準は狭めていきます。
一次架電をどこまでAIに任せられるか
一次架電は、受付への一次ヒアリングという定型的なやり取りが中心になります。ここが、AIに任せやすいかどうかを判断する分かれ目です。
一次架電で確認したいことは、多くの場合「採用予定の有無」「決裁者につながる時間帯」「資料送付の可否」といった、はい・いいえで答えられる項目に整理できます。
| 観点 | 人がすべて一次架電 | AIが一次架電を担当 |
|---|---|---|
| 対応できる件数 | 担当者の稼働時間に依存する | 稼働時間の制約を受けにくい |
| 受付突破前の負担 | 断られる電話に人の時間を使う | 断られた分に人の時間を使わない |
| 記録の残り方 | メモや記憶に頼りやすい | 通話ごとに自動で記録が残る |
| 立ち上がりまで | 採用・教育に一定の期間が必要 | 準備期間は比較的短い |
| 担当者への引き継ぎ | 都度、口頭や手入力で共有 | 反応があった分だけ引き継げる |
この表からも分かるように、一次架電の役割は担当者に届く前の絞り込みです。担当者が最初から向き合うべきは、反応があった企業だけで十分です。
一方で、絞り込みの基準そのものを作る作業や、商談化以降の提案は、人が担うべき工程として残ります。AIに任せるかどうかは、工程ごとに判断するのが現実的です。
図に示した判断軸は、リストの規模と担当者の稼働時間を照らし合わせて考えると分かりやすくなります。件数が増えるほど、人だけで回すことは難しくなります。
人が担うべき工程と引き継ぎの設計
一次架電を効率化しても、引き継ぎの設計があいまいだと、反応があった企業への対応が遅れてしまいます。ここは人が丁寧に決めておくべき部分です。
引き継ぎで決めておくことは、主に3つです。誰が受け取るか、いつ連絡するか、どんな情報を渡すかです。これが曖昧だと、せっかくの反応が放置されてしまいます。
たとえば、ある人材紹介会社では、反応があった企業の情報を担当者に渡すまでに時間差が生じ、企業側の温度が下がってしまうという課題を抱えていました。反応から連絡までの時間は、想像以上に結果を左右します。
- 受け取り担当:誰が反応リストを確認するか決めておく
- 連絡までの時間:反応から何時間以内に連絡するかの目安を決める
- 渡す情報:採用予定人数、決裁者の在席時間、資料送付の可否など
- 記録の扱い:会話内容をどこに残し誰が見られるようにするか
引き継ぎの設計を決めておくと、担当者は反応があった企業だけに集中できるようになります。これが、架電全体の工数を減らす一番の狙いです。
逆に、引き継ぎのルールがないまま件数だけ増やすと、反応リストが未対応のまま積み上がることになります。
よくある失敗とその避け方
架電を効率化しようとしたときに、よく見られる失敗がいくつかあります。ひとつは、リストの絞り込みをせず全件にかけようとする失敗です。
全件にかけようとすると、担当者の時間がすぐに埋まってしまいます。優先順位をつけずに進めると、反応の薄い企業に時間を使い続けることになりがちです。
もうひとつの失敗は、一次架電で聞くことを増やしすぎることです。質問項目が多いと通話時間が伸び、相手の負担も担当者の負担も増えます。
さらに、休眠リストを放置したまま新規リストばかり追いかけるという失敗も見られます。過去に接点があった企業は、再アプローチのタイミング次第で反応が変わることがあります。
- 失敗1:全件に同じ熱量でかけ優先順位をつけない
- 失敗2:一次架電の質問項目を増やしすぎる
- 失敗3:休眠リストを放置し新規ばかり追いかける
- 失敗4:引き継ぎのルールを決めずに反応リストだけ増やす
これらの失敗は、いずれも工程を分けて考えていれば避けられるものです。逆に言えば、工程を分けずに一気に効率化しようとすると、同じ失敗を繰り返しやすくなります。
社内で決めておくこと
架電の効率化を進める前に、社内で先に決めておくべきことがあります。これを飛ばして進めると、途中で運用が止まってしまいがちです。
まず、対象企業の絞り込み基準を誰が決めるかです。営業担当が個人の判断で決めてしまうと、基準がばらばらになり、効率化の効果が測りにくくなります。
次に、一次架電で確認する項目を、社内で統一しておくことです。担当者ごとに聞くことが違うと、引き継がれた情報の質にばらつきが出てしまいます。
- 決めること1:対象企業の絞り込み基準と見直しの頻度
- 決めること2:一次架電で確認する項目の統一
- 決めること3:反応があった企業を誰がどれくらいの時間で引き継ぐか
- 決めること4:休眠リストの再アプローチのタイミング
段階を踏んで進めることも、社内合意を取りやすくするコツです。小さく試すことから始め、うまくいく範囲を確認してから広げていきます。
3段階に分けて進めれば、途中でつまずいても引き返しやすくなります。一気に全リストへ広げるより、確実に前に進めます。
まとめ
明日やることとして、まずは保有リストのうち対象企業の絞り込み基準を1つ決めてみることをおすすめします。業種でも、採用媒体への掲載状況でも構いません。
ただし、その手順を人の電話だけで回そうとすると、すぐに壁にぶつかります。絞り込んだ後のリストが数百社規模になると、担当者の稼働時間だけでは一次架電を消化しきれず、優先順位をつけたリストの多くが未着手のまま滞留してしまいます。
この壁は、一次架電をAI音声エージェントに任せることで変わる部分です。AIであれば稼働時間の制約を受けにくいため、絞り込んだリストの多くに短期間で接触でき、反応があった企業だけを記録つきで引き継げます。担当者は、反応があった企業への対応に集中できるようになります。
ただし、向き不向きは会社ごとの件数や商材によって変わります。自社の保有リストの件数と、一次架電で確認したい項目を整理したうえで、無料相談で確かめてみてください。




