なぜ電話営業のスクリプトで迷うのか
法人営業の電話をかける前に、多くの会社が「台本」を用意します。ただその台本の多くは、名乗りから商談化までを一本道で書いており、想定通りに進む場合にしか機能しません。実際の電話では、相手の返答は毎回違います。
たとえば受付の人が「担当者は席を外しています」と言う場合と、「どちらの件ですか」と聞き返す場合とでは、次にかける一言はまったく違うはずです。台本が一本道だと、この分かれ道でトークが止まってしまいます。
ある製造業の営業部門では、新人が台本通りに話して受付で止まるたびに、次の一言を考えられず沈黙してしまうという相談がよくあります。台本の暗記に力を入れても、相手の返答パターンが用意されていなければ意味がありません。
もう一つの失敗は、台本を作った人と実際にかける人が違うケースです。作った本人には自然に見えても、読み上げる側には違和感が残ることがあります。
問い合わせの内容を見ても、「受付で止まって担当者に届かない」「成果が担当者ごとにばらつく」という悩みは多く挙がります。これはスクリプトの内容そのものよりも、分岐の設計が足りていないことが原因であるケースが少なくありません。
台本を直す前に、まず「どこで詰まっているか」を洗い出すことが最初の一歩になります。
相手の返答から組み立てるとはどういうことか
トークスクリプトを「相手の返答から組み立てる」とは、会話を一つの長い文章として書くのではなく、発話と返答のペアを単位にして設計するという意味です。名乗り、要件の説明、断りへの返しといった各場面を、相手の反応ごとに枝分かれさせます。
具体的には、まず起点となる最初の一言を決めます。次に、その一言に対して相手が返しそうなパターンを3〜5通り洗い出します。そのパターンごとに、次にかける一言をつなげていきます。
たとえば法人向けの電話で「営業部の担当者様はいらっしゃいますか」と聞いたとき、「今席を外しています」「どちらの件ですか」「担当者は変わりました」など、返答は一つではありません。それぞれに合わせた次の一言を先に用意しておくと、当日その場で考える必要がなくなります。
これは個人向けの電話でも同じです。電話に出た本人に直接商材の話をする場合も、「興味ない」「今忙しい」「詳しく聞きたい」で次の展開はまったく違います。
- 1起点を決める最初の名乗りと要件を固定する
- 2返答を洗い出す想定される相手の反応を3〜5通り書く
- 3分岐をつなぐパターンごとに次の一言を用意する
- 4変数を入れる担当者名や商材名など差し替える箇所を決める
- 5声に出して確認実際に読み上げて不自然さを見つける
この手順を踏むと、台本は「読むもの」から「その場で選ぶもの」に変わります。
分岐の数は多ければよいわけではなく、実際によく起きる返答から優先順位をつけて増やしていくのが現実的です。
受付突破型と直接ヒアリング型、どちらから作るか
法人営業の電話は、大きく分けて二つの型があります。一つは、受付を通して担当者や決裁者につないでもらうことを目指す型です。もう一つは、電話に出た本人に直接、用件を聞き取ってしまう型です。
どちらを選ぶかは、商材の性質と相手の顔ぶれで決まります。稟議が必要な高額商材や、部署単位での導入を検討する商材は、受付を経由して担当者に届ける必要があります。一方、個人が自分の判断で答えられる商材であれば、電話に出た人にそのまま聞く方が早いことがあります。
| 観点 | 受付突破を目指す型 | 電話に出た人に直接聞く型 |
|---|---|---|
| 想定する相手 | 決裁者や担当部署 | 電話に出た本人 |
| 名乗り方 | 会社名と部署名をはっきり伝える | 用件を先に簡潔に伝える |
| 断られたときの対応 | 取り次ぎ先を変えて再依頼する | その場で条件を聞いて終話する |
| 向いている商材 | 稟議が必要な高額商材 | 個人が即答できる商材 |
| 通話の長さ | 短く要件だけ伝える設計 | ある程度会話を続ける設計 |
たとえばある不動産関連の営業では、ターゲットの多くが個人の会社員であるため、役員へ取り次いでもらう必要がなく、電話に出た本人にそのまま用件を伝えるスクリプトが向いていました。逆に建築業の法人向け商材では、代表者や担当者への取り次ぎを前提にした設計が必要でした。
どちらの型かを最初に決めておかないと、トークの目的があいまいなまま分岐を作ってしまい、どちらつかずのスクリプトになりがちです。
スクリプトの型を決める前に確認すること
分岐を作り始める前に、社内で確認しておきたい項目があります。これを飛ばして作り始めると、後から型そのものを作り直す羽目になります。
- ターゲット:電話に出るのは受付か、担当者本人か、個人宅か
- 商材の性質:その場で即答できるか、稟議や検討が必要か
- ゴール:アポイントの獲得か、聞き取りだけか
- 通話の長さ:一通話でどこまで話すかの目安
- 終話ルール:関心がない意思を示された場合にどう終えるか
これらを先に決めておくと、スクリプトの分岐の深さが定まります。たとえばゴールが「担当者の連絡先を聞き取るだけ」であれば、細かい反論トークを何段も用意する必要はありません。逆に、その場でアポイントまで取り切りたいのであれば、断りへの返しを厚くする必要があります。
よくある失敗は、ゴールをはっきりさせないまま全部盛り込むことです。受付突破も、ヒアリングも、アポイント獲得も同じスクリプトでやろうとすると、分岐が複雑になりすぎて、どこで何を話しているか担当者自身が把握できなくなります。
社内でこの確認表を先に埋めておくと、スクリプトを作る人と読み上げる人の間で認識のずれが起きにくくなります。
断られたときの返し方をどう用意するか
電話営業で一番多く起きる分岐は「断り」です。ここへの備えが弱いと、担当者ごとに対応がばらつき、成果が属人的になる原因になります。
断りは大きく二つに分けられます。一つは、日程や忙しさが理由の一時的な断りです。もう一つは、関心がないという意思がはっきりした完全な拒否です。この二つを同じ対応で処理すると、しつこい印象を与えたり、逆に取れたはずの機会を逃したりします。
- 一時的な断り:日時を変えて再度かける前提で終話する
- 完全な拒否:以後は架けない対象として記録し、繰り返し勧誘しない
- 判断保留:資料だけ送って、期間を空けて再アプローチする
関心がない旨や、電話を希望しない旨がはっきり示された場合は、勧誘を続けずに丁寧にお詫びして終話するというルールを、社内で先に決めておくことが望ましいです。これは相手への配慮であると同時に、担当者が現場で迷わないための基準にもなります。
よくある失敗は、断りへの返しトークを盛り込みすぎることです。反論トークを何段も用意すると、一件あたりの通話時間が伸び、結果として架電できる件数が減ってしまいます。断りへの返しは、効果が高いものを1〜2段用意する程度にとどめる方が、全体の件数と成果のバランスが取れます。
スクリプトを作ったあとの直し方
スクリプトは一度作って終わりではありません。実際にかけてみると、想定していなかった分岐や、特定の場面で離脱が多い箇所が見えてきます。
通話の記録や文字起こしを見返すと、どのやり取りの直後に電話を切られているかが分かります。ここが見直しの起点になります。離脱が多い箇所があれば、その言い回しを変えるか、間に一言はさむかを検討します。
たとえば同じスクリプトでも、リストを分けてA/Bテストをすることで、どちらの言い回しがより先まで会話を続けられるかを比べられます。ある営業組織では、時間帯によって反応が変わることに気づき、かける時間帯を絞り込んだ例もあります。
見直しのたびにスクリプト全体を作り直す必要はありません。離脱率が高い1〜2箇所を直すだけでも、全体の成果は変わってきます。逆に、根拠のないまま全体を頻繁に書き換えると、何が効いたのか分からなくなるので注意が必要です。
社内で決めておくこと
スクリプトの分岐設計と並行して、社内で決めておくべきことがいくつかあります。まず、誰の声・誰の名前で電話をかけるかです。担当者名を変数として入れる場合、実在の担当者名を使うのか、部署名にとどめるのかで印象が変わります。
次に、スクリプトの確認体制です。作成したスクリプトを誰がチェックし、いつまでに修正点を伝えるかを決めておかないと、確認が後回しになり、精度の低いまま運用が始まってしまいます。社内で確認担当者と期限を先に決めておくと安心です。
さらに、受付突破やヒアリングがうまくいった場合の引き継ぎ方法も決めておく必要があります。そのまま電話を転送するのか、担当者が折り返すのか、記録を残して後日連絡するのかによって、必要な準備が変わります。
どちらが正しいというものではなく、社内に分岐設計の経験がどれだけ蓄積されているかで選び方が変わります。
まとめ
法人営業のトークスクリプトは、一本道の台本ではなく、相手の返答ごとの分岐として組み立てることで、担当者が変わっても対応がぶれにくくなります。受付突破型とヒアリング型のどちらを目指すかを先に決め、断りへの返しは絞り込み、通話データから離脱箇所を直していくことが、スクリプトを育てる基本の流れです。
まず明日、今かけている電話の断り文句を3つ書き出し、それぞれへの次の一言を1行ずつ用意してみてください。これだけでも、担当者ごとの対応のばらつきは減らせます。
ただ、これを人の電話だけで回そうとすると、壁にぶつかります。断り文句のパターンを試すには、ある程度の件数をこなす必要がありますが、担当者が本業と兼務していると、かけられる時間帯も限られてしまい、どの分岐がよく起きているのか、データがそろう前に手が止まってしまいます。
この壁は、AI音声エージェントに架電を任せることで変わってきます。同じ分岐設計を、時間帯を変えながら大量の件数にかけ続けられるので、どの分岐で離脱が多いかがデータとして残りやすくなります。断り文句ごとの反応も記録として蓄積されるため、担当者の勘に頼らずにスクリプトを直していけます。
ただし、向き不向きは会社の商材やリストの性質によって変わります。まずは自社の件数と条件を伝えて、無料相談で確かめてみてください。




